2023/12/30

時価総額は目指すものでなく、結果である。~2023年の締めくくりにかえて~

みなさん、こんにちは

2023年も大晦日で、あと残り数時間というところまで来ましたがいかがお過ごしでしょうか。私は元気です。あ、Starshot Partnersの丸山です。

気づけばこのブログの更新もだいぶ間隔があいてしまっていますが、以前のブログではいつも年末になると締めくくりのエントリを書いていて、ときどきくさして

2021年の最初で最後のブログの更新となりますので、渾身の一撃を書くかどうか悩むところですが、12月30日に更新するとほぼ読まれないので、今年チャレンジしたデカ盛りの話でも書いてもいいのですが、それだと毎年恒例の年末のご挨拶感ないのですね。

なんてことも書いたこともありましたが、そのときは結果として”2020年代をベンチャーキャピタリストとしてどう生きるのか”なんて大それたことを書いてました。


さて、そんなわけで今年は大してブログを書いてなくて、気づけばVC界隈はPodCastが流行ってきてますが、私はテキストが好きなので、よしなしごとをそこはかとなく書きつくっていこうかなと思ってますよ。引き続き

いや、動画も音声も編集がめんどいんですよ。なので個人的にはとって出しのライブじゃないとしんどいなっていうのがあるんですが

あ、話はそれますが来年はとあるPodCastにお呼ばれしたのでPodCastデビューするかもしれません。ラジオは2022年10月に出演させていただきましたが楽しかったので、また出たいところです。


それはさておき、2023年を締めくくるうえで何を書こうかなというところですが、今年の夏に親方のほう

「2027 年までに、上場・非上場含むスタートアップの株式時価総額の合計額を 100 兆円規模とする」

と今年メッセージが出て記事にもなってますし、昨年は政府がスタートアップ育成5か年計画において

将来においては、ユニコーンを 100 社創出し、スタートアップを10 万社創出することにより、我が国がアジア最大のスタートアップハブとして世界有数のスタートアップの集積地になることを目指す。

と謳われておりました。

かたや、今年に入って2023年2月の東洋経済において「大物ユニコーン突如誕生、「時価総額」急騰の死角」という記事のなかで

希薄化率0.5%の新株発行でユニコーンに

「ユニコーンとして時価総額2000億円の評価を得て、資金調達を実施しました」

1月上旬、給与の前払いシステムの開発提供を手がけるADVASA(アドバサ)は、自社の時価総額が2000億円となり、ユニコーンに仲間入りすることを発表した。新株予約権を含めた潜在株ベースでの時価総額は2301億円におよぶ。

 というようなお話が出てきて、2023年3月の「「公表見送り」ベンチャーランキングに起きた異変」というお話が続きました。

そもそも流動性のない未上場企業の株式の価値なんてものは、発行体と小数の投資家との交渉によって決まるもので、多様な投資家の売買によって成立する上場企業の株式の価値とは異なるものであるという大前提があったりするわけです。

もちろん米国のようにストックオプションが未上場でも行使できて、それらを含めた未上場株式の二次流通市場が発達していると、上場が近くなってきたり有名な企業だとちょいちょい取引が起きて、この記事にあるFacebookのように

Facebookも2011年に株主が500人を超える見込みであったため、継続開示を行わざるを得ないことになり、上場準備を進めた、ということになっています

なんてこともあったりしたとかあるわけです。記事中にあるように

(1)証券保有者2000人以上、又は(2)accredited investor(※※)ではない証券保有者が500人以上、

という改正が2012年にあってだいぶハードルはあがったみたいですが。

ちなみに日本でも関東財務局のページにありますが、有価証券報告書の提出義務者として

所有者数が1000人以上の株券(株券を受託有価証券とする有価証券信託受益証券及び株券にかかる権利を表示している預託証券を含む。)または優先出資証券(ただし、資本金5億円未満の会社を除く。)、及び所有者数が500人以上のみなし有価証券(ただし、総出資金額が1億円未満のものを除く。)

 と、話がそれました。

未上場企業では1度でも株価が付いてしまえば、その価格で他に欲しい(買いたい)投資家が存在しなくともそれが時価総額となるという現実を考えると、上記の東洋経済の記事にあるような話は誰でもできてしまうことでもあるのです。

極論すると、会社設立費用が10万円くらいなので、資本金10万円、発行済株式総数1,000万株(0.01円/株)で会社を作り、1万円/株で1株だけ増資をすれば時価総額1,000億円の会社=ユニコーンができてしまうわけです。
※厳密にはユニコーン企業の定義(SMBC日興のサイトにあったので)

評価額が10億ドル以上、設立10年以内の非上場のベンチャー企業

とあるので、いまは1410億円くらいの時価総額が必要なので、1.5万円/株で1株だけ増資すれば理論上はユニコーンが誕生するわけです。

これを応用すれば10億株の発行済株式総数の会社が、10万円/株で1株発行すれば100兆円企業も誕生させることはできるわけです。理論上は。

こんなこと意味がないよって思うじゃないですか。私もそう思います。

でも未上場企業の企業価値がこのように決まるメカニズムにあるというところはしっかりと意識しておく必要があると思うわけです。

そもそも上場企業の株価は多様な考えをもつ多数の投資家たちによって日々売買をされることで形成されていくものであって、そのような多面的な考えが反映され、さらに売りたいときに売れ、買いたいときに買えることでその株価が適正なものとなる価格発見機能が発現していることになるのです。
※なので流動性が低い株は価格発見機能が発現しきれてないという話にもなるのですが

では、その株価の基礎となる考え方とは何か

大原則は

株価=EPS(1株あたり利益)×PER(株価収益率)

という構図になる(BPS×PBRというのもありますが、基本は上の方かなとは思うわけです)

いまの1株あたり利益の何年分の価値があるのか、それが株価となるともいえるわけですが、このPERというものは言い替えるなら、期待値であるといえるわけです。

期待値とは何か、

それは将来においてどのくらい利益成長するのかをいろいろな投資家が考え売買した結果として発現するものである

ということではないかなと。

1株あたり利益が100円/株と同じ会社があったとしても、1社は株価が5,000円/株、もう1社は1,000円/株となるようなことはよくある話ではあります。

このPER50倍とPER10倍との間にあるものが将来の利益成長に対しる投資家の期待値の違いというものであると

PER10倍は将来にわたって利益がほぼ横ばいか微増か微減かというような期待値しかなく、
PER50倍は将来において利益が倍増以上するような期待値がある

ということに他ならないかなと思ってます。

つまり、しっかりと利益を出し、その利益がどう成長するのかの投資家の期待値の結果が時価総額であるともいえるわけです。
PSRもすごく高い売上成長の結果として、将来莫大な利益が生み出されるという期待感があるからこそ、売上高成長を株価の評価としていたりするわけです(毎年倍とかで売上伸びるみたいなことが大前提ではあり、大した売上成長もなくPSRで評価をするのはそもそも間違っていると思いますが)

逆に株価や時価総額を目標に据えると、未上場であれば上述したような話も極論として出てきますし、上場企業であっても利益を生みだし成長させるには時間がかかることから、期待値部分を上げることだけに焦点をあててしまうようなことになるわけです。

でも、そんな張りぼての施策によって一時的な熱狂によって生じた期待値は、四半期毎の実績の開示によって急速にしぼみ失望へと変わりやすいものでもあるのです。

そして失望から改めて信頼を勝ち得るためには、地道な利益成長に向けて努力と実績が必要になり、結果として余計な回り道をすることになる本末転倒なことになると。

短期の投資家であれば熱狂の最中に売り抜ければそれで終わりかもしれませんが、発行会社の経営や投資家とのコミュニケーションは継続していくことになることは十分に意識しなくてはなりません。

こうしたことからも熱狂的なムードを作りIPOさせ、未上場投資家だけが利益を得るようなことはあってはならないことでもあります。

また、最近では、未上場時の株価よりも低い株価でのIPOも散見されるようになってきましたが、未上場投資家は雰囲気で株をやらず(byインベスターZ)、スタートアップするとはどういうことかを改めて考え、より速くより大きく成長するために起業家やチームとともに何ができるのか自問自答し、実践し続ける不断の努力が欠かせないのではないでしょうか。

より速く、より大きく利益が成長することが期待値の上昇に繋がるわけで、それをより多くの人に理解してもらうことこそが期待値上昇には欠かせず、いいエクイティストーリーにもなるという話であると。

こうしたことの積み重ねの結果として、時価総額100兆円やユニコーン100社に到達することには何も問題はないですが、目標としてそれらを掲げることは道を誤ることにも繋がりかねない危うさを秘めているのではないかと感じるわけです。

もちろんわかりやすい目標を掲げてそこに向けてがんばるというのは大事なことだとは思いますし、それはそれでそれを掲げざるをえない部分もあるとは思いますが。

ネットバブルの熱狂の残り香を嗅ぎながら社会人をスタートし、その後いくつかの波を乗りこなしてきたなかで感じることは、これまで時価総額が目標となったときに危うい場面を迎えてきたなという気がしているわけです。

時価総額を追うのではなく、生み出す付加価値=利益をどれだけ速く大きくできるかが大事であることを改めて考えていく2024年になるんじゃないかなと思います。

もちろん速く大きい利益成長を実現するために、大きな投資を行って一時的な赤字になることもあるとは思います。Amazonだって上場してずっと赤字続きだったけど、ジェフ・ベゾス氏のエクイティーストーリーに関する説明力と高い売上成長の実績が将来の莫大な利益を期待できるからこその株価であったともいえるわけです。

翻って私も含め未上場投資家は、将来の高い利益成長のために、未上場時にいかに高い売上成長を実現を後押しし、その売上成長率がより高くなるためにはどうしたらいいか、将来の利益率がより向上するためには何が必要かを起業家やチームとともに考えぬいていくことこそが最大の付加価値であることを意識して日々精進することが大事なんじゃないかと思う大晦日でございました。

今年も、過去の記事が参考になりましたと言われることがありましたが、ときどきでも読んでいただけて大変ありがたいです。

ということで、ユニコーンでは、大迷惑も好きな曲ではありますが、その選曲だとなんかいろいろありそうなので「すばらしい日々」を聴きながら終わりにしたいと思います。

読者のみなさまにとって2024年が素晴らしい1年となりますよう祈念しております。

よいお年をお迎えください。

それでは。また来年



2023/08/14

ビットバレーから25年、いまもその鼓動は響いている

みなさん、こんばんわ。

すっかり日本は夏ですが、前回のエントリが4月だったことにちょっとした衝撃を受けた丸山です。いかがお過ごしですか。

いや、なんかすっかりブログのことが頭のなかからこぼれおちていたのですが、最近やっと思いだしてなんか書かないとなーって思った次第です。

最近も界隈ではいろいろな話題が目白押しですが、どうやら港区のほうにベンチャーキャピタルが集積する拠点が作られるとか。独立系VCやCVCを中心に70社くらいが集結するというプレスリリースをチラ見した次第です。なんとなく10年くらい前に、木下さんと日本のサンドヒルロードで盛り上がった記憶があったのでブログを探してみたけど、どうやらそのドメインはもう違う人がもっているらしくて404になっていて、そのドメインは 

”当サイトはアダルト内容含むため、18歳未満の閲覧は禁止致します。”

という記載があったのでご注意くださいませ

さて、そんな流れのなかではありますが、なんとなく日本のVCというと古くは東京駅周辺(鉄鋼ビル)界隈や半蔵門・麹町界隈というイメージがありつつも、2010年代前半くらいまではなんとなく渋谷界隈から246号線沿いみたいなイメージを勝手にもっていた次第ではありますが、そこは徐々に変わりつつあるということかもしれません。

でも、私が最近までお世話になっていたネットエイジや西川さん、小池さんをはじめとしてなんとなくこれまでかかわってきた会社や人たちが99年2月からのビットバレーのムーブメントに関係していたこともあってなんとなく渋谷区に思い入れもあるし、そのビットバレーの鼓動はいまも日本のスタートアップ界隈やVC界隈には響いているともいえるんじゃないかなと思っていたりするわけです。


ちなみにビットバレーの鼓動の表紙はこんな感じ。

Amazonはじめ各所で中古で売っているみたいですので、興味ある方は読んでみてもいいかもしれません。

あれから四半世紀が経ったのかと思うと感慨深いですが、孫さんが海外からプライベートジェットをチャーターして帰国してすぐにイベントに駆け付けたりという熱狂ぶりが報道されるくらいだったんですが、実質的には1年くらいしか活動していなかったのかと思うとなんかすごいムーブメントだったなと思うわけです。

ちょうど私は社会人になるタイミングだったのですが、この熱狂の残り香だけでも嗅げたのはいい思い出です。

シブヤ経済新聞にビットバレーに関する記事があったのですが、そこに載っていた西川さんが「週刊ネットエイジ」というメルマガに投稿したビットバレー構想の文章が秀逸だったので引用(の引用かな)しておきます。

「時は世紀末、100年に一度の大社会変革期の真っ最中。そして、その重要な主役がインターネットであることに気づいた若いベンチャー企業が東京・渋谷付近に続々と集積している。おそらくその土地の風が未来有為の若者を惹きつけるのであろう。渋・谷=Bitter Valley、そう、アメリカにSilicon Valleyがあるなら、 日本にはBitter Valley がある」

BitterがBitになってBitValleyとなるわけですが、そんな歴史があって、引き続きスタートアップが集う街であり続けている渋谷には、個人的にもとっても愛着もあるので、そこで引き続きキャピタリストとしてがんばっていこうかなと個人的には思ってます。

ということでシブヤといえば「渋谷で5時」で〆たいと思います。

また次回


2023/04/10

コロナ前後で世界各国の映画興行収入はどう変化したか

こんにちは。丸山です。

すっかり春めいてきましたがいかがお過ごしでしょうか。私は趣味の銭湯/スーパー銭湯巡りで郊外のとある湯に浸かっていたのですが、そこに地元の中学生3人×2組が入ってきまして、訳知り顔のリーダーがサウナ→水風呂→休憩をセットでこなすのがいいんだと力説し、休憩時には整った、整ったと言っていました。いよいよここまでという思いを強くした次第です。

それはさておき、最近映画館で映画観てますか?

私は年1~2回くらいのライトユーザーなのですが、仕事柄というか映画やエンタメの状況は気になったりするのです。

AIなどが進んだ先で人間でないとできない仕事って考えたときにエンタメやクリエイタの領域があるのではないかという仮説も持っていたりしたのですが、GenarativeAIが進むと、むしろエンタメ領域が先にっていうことにもなりそうな気配ではあります。

ただ、個人的にはみんなの及第点はとれるかもしれないけど、誰かの120点を取るというのはまだ難しいのかもしれないので、そこにこそ人間の生きる道があるのかもっていう話なのかもしれないけど、そうなっちゃうといままでのマスに向けてっていう制作方法自体が大きく変わらざるを得なくなるんじゃないかなと。

そういう意味では顔を浮かべられる人たちに向けたエンタメの提供というところに立ち返るあたりで、人類は平安時代あたりから学ばないといけないのかもしれません。いや、平安時代のエンタメとか知らないのであくまでもイメージですが。

それはともかく映画のお話

ちょうど”映画「スーパーマリオ」、北米週末オープニング興収で今年の最高記録”というお話や”新海誠監督の新作「すずめの戸締まり」、中国で公開、日本アニメ映画として興行収入が最高に”というお話もあったりしていて映画興行が世界的に戻ってきてる感があります。

日本でも昨年は”2022年邦画興収はアニメ3作品が100億円超え、洋画興収は前年比で約2倍に”という話もありました。上位5作品はこんな感じです。

1. 「ONE PIECE FILM RED」197.0億円(東映)

2. 「劇場版 呪術廻戦 0」138.0億円(東宝)

3. 「すずめの戸締まり」131.5億円(東宝)

4. 「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」97.8億円(東宝)

5. 「キングダム2 遥かなる大地へ」51.6億円(東宝 / SPE)

邦画実写や洋画よりもアニメが強いのはここ数年の特徴ではありますが、それがとっても顕著だった1年のような気がします。

あと、なんとなく世界的に40~50代くらいの層をターゲットにした原作やそのリバイバルというか続編ものが多い気がしていて、いろいろ言われてますけど一番時間とお金がある層がターゲットになるのは世の常という感じなんですかね。知らんけど

日本のTVCMなどだといまだにF1やM1とか狙っている気もしますが、テレビ見てる層と大きく乖離はしている気もしていて個人的には60代以上をターゲットにすべきなんじゃないのかなっていう気はしています。

このあたりは最近上場したハルメクホールディングスの事業計画及び成長可能性に関する事項についてがとっても示唆に富んでいる気がしました。

特に新聞読んでいる層とかのデータは個人的に衝撃でした。

あ、このままいくと本題にいけないので、ここで本題

ということでコロナを踏まえて世界の映画興行収入はどうなっているのか

米国のMotion Picture Associationがまとめている「THEME REPORT」の201920202021というあたりと、このあたりのニュースや先ほどの2022年邦画興収はアニメ3作品が100億円超え、洋画興収は前年比で約2倍にというあたりから数値を持ってきてとりまとめてみました。

グラフにするかと思いきや、上位2か国がでかすぎるので、グラフよりもそのまま数値の方がよさそうなので、そんな感じにしてみました。

日本は2022年が前年比131.6%の2131億1100万円となり、動員数も1.5億人いるのですが、いかんせん円安の影響でドルベースだとちょっとしか伸びてない感があります。(たぶん円安というよりかは世界的なドル高なので、ドルベースだとちょっと他が不利な部分はありますが、、、)

ちなみに日本は2611億円(2019年)→1432億円(2020年)→1618億円(2021年)→2131億(2022年)という感じでして、2020年は2000年代最高の興行収入だったようですよ。

2023年はほぼ全世界的に戻ってきそうな感じで、先ほど話があった「すずめの戸締り」や「スーパーマリオ」の好調の背景にあるのかもですね。

人口では、北米(米・加)3.7億人、中国14.4億人、インド14億人、ロシア1.4億人、メキシコ1.3億人、日本1.2億人、ドイツ0.8億人、英国0.6億人、仏0.6億人、韓国0.5億人、豪0.2億人という感じです。物価も大きな開きもあるので比べるのは難しい部分はありますが。

インドや中国はまだまだこれから成長が期待でき、北米は人口増加もあったり消費意欲旺盛で物価上昇などもあるので伸びる余地はありそうで、欧州や豪州、韓国などは人口を考えると市場はそこそこ大きいなという印象はあります。

そのなかで日本はもともと人口を考えるとそこまで市場が大きくないなかで、これまでおおく観劇していた高齢化が進展することで徐々に劇場に足を運びづらくなっていく可能性が高く、そうなると市場は縮小していきかねないので、それに対して40~50代をターゲットにすることや高リピート層に支えられるアニメを深堀りしていくことで短期的にはいいかもしれません。しかし、新規開拓や劇場から足が遠のいている人たちをいかに改めて足を運んでもらうのかという視点をもたなければ、超長期で考えれば日本の映画産業が弱体化していく可能性も高いのではないかと思う次第です。

配信でもいいじゃないかという話もありますが、「映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~」という本が話題になったように、コンテンツを消費するということであれば配信なども選択肢になると思いますが、映画館で映画を観るという体験自体がエンタメとしてどういう価値を提供できるのかということを試されていることでもあるのかなと思います。

何のために人はエンタメを楽しむのか

AIがいろいろな分野に浸透していくことも踏まえながら、このあたりを深堀りして考えていくことが、次の事業や投資の大きなテーマ探しに繋がっていくような気がしてなりません。

ということで往年の名曲「有楽町で逢いましょう」(フランク永井)を聞きながら終わりにしたいと思います。(Youtubeこれでいいのかな。なんか問題ありそうならあとで差し替えるか消します)

では、また。

2023/03/01

世界のスタートアップはどこを向いているのか(2022年下期編)

こんにちは。丸山です。

3月に入って花粉が大量に飛び交っていることを実感する東京からお届けしておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。明らかにここ数日は目に入る異物の量が増えたような気がします。

それはさておき、私が大崎さんと2021年から始めている勉強会に”世界スタートアップ展望”というものがあります。

これは私がまだ前職だった時代にをやっていて、大崎さんはそこに参加いただいていたのですが、2013年のころに世界のベンチャー企業の資金調達情報をまとめてもらいつつ、キャピタリストや事業会社の方々をお呼びして、それを見ながらあーでもないこーでもないと世界のスタートアップの今後に思いをはせていたわけです。

時は流れて2021年の正月に大崎さんとオンラインでMTGしてるときに、「また塾みたいなのできませんかねカジュアルなやつで」と彼が言ってきたので、私は”カジュアル”という部分をすっ飛ばして、2013年前後にやっていたやつの2020年代版をやろうと決意したわけです。

これまでに1シーズンだいたい4~5か月のプロジェクトで第4シーズンまでやってきましたが、毎回3~4名くらいの23歳以下の方々に参加していただいてました。

最初はアメリカ、インド、欧州、東南アジア、中国という5地域のスタートアップの資金調達動向を探っていましたが、直近の第4シーズンでは井坂さん、井上さん、北森さん、松本さん(50音順)の4名の参加者がこれらに加えて韓国、アフリカ、Crypt、米国IPOとM&A、イスラエルというところまでカバーしてみました。あと井上さんが趣味(?)で米国のVCファンド組成情報なんかも収集してくれました。

やっていることといえばひたすらに世界のテック系メディアなどからスタートアップの資金調達情報を集めてくるというもので、端的にいえばだれにでもできることなのですが、それを一定期間収集を続けることで見えてくるものがあるというのが考え方です。

このあたりは私が学生時代にゼミで読んだ本の著者のが”世の中にあふれている情報を収集・分析・考察することで ぼんやりと未来は見通せる”という感じなことを書かれていて、実際に情報を継続的に集めていくことで点でなく線や面で見れるようになるなという経験があったからです。
(余談ですが、いま調べたらお二人ともお亡くなりになっていることを知りました。R.I.P.)

いまでいえばOSINT的なアプローチであったりするのかもしれません。違うかもだけど

そんなわけで、約半年をかけて動向を見てきたこの2022年後半の世界のスタートアップの状況と今後の展望について私なりの見解について簡単にまとめておきたいなと思います。

1.総論

2022年後半については、たぶんこのブログを読んでいただいている方もご存じのとおりにベンチャー投資についてはだいぶ資金供給が絞られたという印象がありました。

特に米国や東南アジアは顕著で、インドなどにもその影響が波及してきており、Cryptについても1年前の熱狂がどこにいったのかという感じにもなりつつある感じでした。米国の金融引き締めの影響や、株式市場の落ち着きの波及効果を実感したところではあります。

2.各論

個別で各地域をざっと見ると

まず米国は以前のように毎週数社のユニコーンが生まれるようなことはなくなり、どちらかというとシードやシリーズAの件数が増えたような印象があり、こういうところにアメリカの強さを感じています。分野でいうと界隈的にはChatGPTの衝撃がありましたが、その前からAIを活用したサービスを提供する企業が大きく増加し、ソリューションというよりかは具体的にFintechやバイオ、ヘルスケアをはじめ多くの分野にAIを組み込んだサービス(ソフトウェア)提供事業者が増えています。

個人的にはWeb3がやや冷静になったことや、テック巨人を中心としたレイオフなどで、人々が次のフロンティアとしてAIを活用したサービス事業者に流れ込んでいるという部分もあるんじゃないかなという仮説を持っていますが、どうなんでしょうか。このあとも状況を見ていきたいと思います。

IPOについては相変わらずSPACが多くて、それ以外だとバイオ企業のIPOが目立つ感じで、所謂Tech系企業の上場はほぼなかった感じです。

井上さんがまとめてくれていたVCファンドの組成状況からは大手は比較的組成がなされていて、逆に新規で立ち上げるところがやや厳しめという感じではありました。あとはけっこう多岐に渡る分野でテーマ特化型ファンドが立ち上げられてる感じはありました。

個人的には山火事特化や気候変動、生物多様性に特化したシードファンドなどがあるところに面白さを感じました。日本にいると気づかないけど世界的には山火事の大規模化、長期化などもあったりするのでなるほどなと思った次第です

次に東南アジアは、以前は毎週のようにユニコーンが生まれていましたが、総論で述べたようにだいぶそこは減退してきている印象で、その資金もシンガポールのハイテク(先端技術)、インドネシアのマス向け(BもCも)のサービス事業者に集中しているような印象を得ました。

インドネシアは近い将来に人口が3億人にも達するといわれており、島国ではあるものの、その比較的大きな人口(しかも若者が大半)を背景として、多くのサービスが成長するだろうという観点での投資が継続されているという感じがしています。

次に今回はじめてだった韓国ですが、人口でいえば日本の半分よりも少ないくらいですが、今シーズン中に資金調達をしているスタートアップ企業は日本と同じかそれよりも多いのではないかという印象を受けました。以前に聞いた政府によるVCへの助成みたいなものもあってか投資家も多く、政府系基金などもあったりして、資金調達環境がだいぶ整備されている印象を受けました。

そして、韓国スタートアップといえば世界展開を視野にいれてという感じの印象ですが、今シーズンを見ている限りでは、いきなり世界展開というよりかはまずは韓国国内予選を勝ち抜いてから世界展開という感じだなというところと、意外と韓国国内向けのサービスも多い印象でした。AIを活用したサービスも多岐に渡っているほか、先端技術や新しい領域に貪欲に取り組んでいて、Webtoonをはじめとしたエンタメ中心なのかなという先入観は捨て去ったほうがいいなと思いました。

続いて中国。2021年前半などはTech系/デジタル系のスタートアップが数多くあったのですが、相次ぐ規制などによる影響で外資系投資会社の撤退やテック巨人の投資抑制などもあってだいぶ下火になっていて、2021年後半や2022年前半などは半導体、エネルギーや宇宙などのディープテック系の領域に資金は集中していました。

こうしたなかで再びTech系/デジタル系に絞ってみてみようと思った2022年後半ですが、分野特化のコマースやB向けソフトウェアには資金が集まっているという印象で、規制が強いC向け分野はなんとなく下火な印象でした。

次にインド。4thがスタートした9月ごろはまだ資金調達環境はよさそうでしたが、総論で述べたように徐々に資金供給が絞られた(見極めが進んだ)印象でした。こうしたなかでもFintechは多くの企業が資金調達をしていたり、EC関連などのC向けサービスも資金調達が進んでいる印象で、今年たぶん世界最多の人口を擁する国となるインドの成長とともに伸びるサービスへの投資が引き続きという感じはしました。あとは教育関連も徐々に増えているかなと。

それに加えてインドではEV関連スタートアップへの投資がシーズンを重ねるごとに増えている印象で、EVメーカー、充電インフラ関連やEV向けFintechなどなどいろいろなレイヤーのサービス事業者が出現し投資を受けています。

続いてアフリカ。アフリカはなんとなく界隈の印象だとケニアやルワンダあたりが注目なのかなと思ったのですが、それに加えてMENA(Middle East & North Africa)地域の足掛かりであり人口1億人を擁するエジプト、人口が急増し2050年には3.7億人になると推計されているナイジェリア、そして南アフリカの4地域を中心としてスタートアップが投資を受けているいるようです。(参照しているメディアがそれらのエリアに強いっていう話なのかもですが)

全般的にはFintechが多く、ECも多いというのもありますが、南アフリカはヘルスケアとかセキュリティとかもある感じでした。

イスラエルは要素技術が多くアメリカとの結びつきが強いなという印象で、Cryptは調達件数は減っていてDeFiやインフラ関連よりも、NFTの活用したサービスやゲーム、セキュリティなどが増えてきたかなという印象で、市況的にはちょっと冷静になっているものの起業家や投資家は次の一歩を踏み出している印象を受けました。

最後に欧州。貿易や人の動きが多いのでロンドンを中心にFinTechは相変わらず多いのですが、それに加えてB向けソフトウェアやヘルスケアも増えています。それ以外だと以前から欧州で多いFoodTech(代替食品中心)や、排出権に絡めたサービスや気候変動関連、エネルギー関連などのサービスが増えていきているかなという感じはしました。もちろん各種サービスへAIを実装しているところも増えてきています。

3.結論
みんなわかってるよっていう話かもしれませんが、人口が増えていたり経済が大きく成長している国では成長の果実が得られやすいマス向けサービスへの投資は定石であり、先進国では先端のテクノロジーを駆使し、大きな課題を解決しつつフロンティアを生み出していくことに注力するということは変わらないなと。

特にこれまで以上にあらゆる領域でAIを活用したサービスが増え投資を受けていることで、なんとなく世の中が進歩するスピードが速まりそうな気配を感じています。

翻って高齢化が進み、人口が減少をはじめた我が国では、こうした世界の流れに比べてどうなのか、成長戦略そして生存戦略としてどういうところに焦点をあてていくべきなのか。スタートアップが増えれば、ユニコーンが増えればなんとかなるというものではないので、こうした勉強会を通じて投資家としての研鑽と、情報発信を通じた啓蒙をしていけたらいいなと思ってます。

最後に世界スタートアップ展望では5thシーズンに向けて参加者を募集しています。

●対象者:

23歳以下の今後の世界のスタートアップの動向などが気になったりならなかったりする方で毎週データを蓄積していく作業が好きな方(基本的には学生の方がよいかなと)

(性別・国籍は不問で、日本語が使える方。英語や中国語などが使えるとなおいい感じです)

※将来的に起業や投資などを志したい人や世界を股に掛けたい人におすすめです。すべてオンラインで開催しますので所在地は問いません

●応募締切:3/6(月)午後6時

●募集:2~3名程度(※応募多数の場合は審査・抽選を行います。)

興味あるかたはこちらのフォームからぜひご応募ください。お待ちしてます!(応募は締め切りました)

ということで最後は3月になったのでレミオロメン「3月9日」を聞きながら終わりにしたいと思います。

では、また。



2023/02/09

こんど月の裏で会いましょう ~はじまりにかえて~

こんにちは。丸山です。

以前にやっていたBlogを終わらせてから何か書きたいなと思って半年超が過ぎました。

何か書きたいなと思っていたのですが、同じBlogシステムを使うのもな、と思っていて新しいシステムを探していました。

そしてこのBloggerに行きついた次第です。特にこれといってBloggerにした理由はないんですけど、最近LINE Blogがサービスを終了するという話もあったりするのでなるべく長く書き続けられるといいなと思ってます。

ということでこのBlogでは、以前にやっていたBlogとそれほど変わらずに、徒然なるままにスタートアップと投資に関することを書いていこうかなと思っている次第です。

以前に比べると仕事の幅が広がって、身体の幅も広がりつつあるので、これまで以上に幅広い話題について書き連ねられるともいいかなと。

ということで最初のポスト恒例(?)のどんなポジションで書いていくのかということを明らかにしてはじまりにかえたいと思います。
ちなみに前のBlogの最初のポストはこちらですが、当時は2012年1月、そしていまは2023年2月。およそ11年の月日が経過したことで社会の環境はガラッとかわりましたので、そのあたりも踏まえてという前提で、いまのところは以下のことを念頭に置いて書いておきたいなとは思ってます。

・日本で起業やスタートアップへの就職・転職がより普通の選択肢となるといいな
・世界をあっと言わせるスタートアップが日本からたくさんでるといいな
・大志を抱く人が増えるといいな
・日本のベンチャーキャピタリストがもっと活躍できるといいな
・成功できるまで何度でも挑戦できる社会となるといいな
・自分や自分の会社のプレゼンスもちょっとあがるといいな

というあたりですかね。続けていくと変化するかもですが、いったんはこんな感じで。

世界を見渡せばここ数年で一気にさまざまな分野で技術革新が進んでいることをひしひしと感じます。特に2020年を分水嶺にそれ以前と以後でだいぶ違う世界になったなと。

もちろんそれ以前からの挑戦の成果が一斉に芽吹いたということではあるとは思いますが、新型コロナウイルスの蔓延をきっかけとした社会の、そして人々の変化が醸成した部分もあるんじゃないかなとは思ってます。

大規模な金融緩和の結果としての高インフレ、その対策としての金融引き締めによる景気後退、それによる欧米を中心としたテクノロジー企業の大規模なレイオフ

こうした流れのなかでテクノロジー企業にいた人材がフロンティアに流れ出していて、こうした技術革新の流れを加速していくんじゃないかと思ってます。

その一方で、中国はデジタルに関する規制もあり、資金調達動向を見ているとDeepTechへの投資が続いていて、彼は彼らで多岐にわたってフロンティアを求め切磋琢磨している感があり、技術革新の流れを加速しているように感じます。

この技術革新のスピードアップは、シンギュラリティを近づけるかもしれないし、人類が宇宙に住めるようになるのかもしれないし、それこそ太陽系外の恒星や惑星への到達が目指せるかもしれません。Oh!Starshot!!

そういう意味では一般人が宇宙に行くことは夢のまた夢という感じでしたが、こうした流れのなかでその実現も少しは近づいてきているのではないかと思っています。

夢だと思われていたことも、このような大志を抱いた人たちの情熱的な飽くなき挑戦がその実現を近づけているわけです。

まだまだ一般人が月までいくのは夢のまた夢という感じではありますが、今後の技術革新により気軽に月に行けたり、別の惑星にいける日も来るのではないかと思っています。

私はそういった大志を抱き挑戦を続ける人たちとしっかりと支えていきたいと思ってます。

そして月へ行くことが普通になった暁には、

「こんど月の裏で会いましょう」

と友人たちと言い合いたいですね。

ということでそんな時代の到来を期待しつつ、最後は1991年11月20日に発売されたORIGINAL LOVEの「月の裏で会いましょう」を聞いて終わりにしたいと思います。

では、また。