2023/03/01

世界のスタートアップはどこを向いているのか(2022年下期編)

こんにちは。丸山です。

3月に入って花粉が大量に飛び交っていることを実感する東京からお届けしておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。明らかにここ数日は目に入る異物の量が増えたような気がします。

それはさておき、私が大崎さんと2021年から始めている勉強会に”世界スタートアップ展望”というものがあります。

これは私がまだ前職だった時代にをやっていて、大崎さんはそこに参加いただいていたのですが、2013年のころに世界のベンチャー企業の資金調達情報をまとめてもらいつつ、キャピタリストや事業会社の方々をお呼びして、それを見ながらあーでもないこーでもないと世界のスタートアップの今後に思いをはせていたわけです。

時は流れて2021年の正月に大崎さんとオンラインでMTGしてるときに、「また塾みたいなのできませんかねカジュアルなやつで」と彼が言ってきたので、私は”カジュアル”という部分をすっ飛ばして、2013年前後にやっていたやつの2020年代版をやろうと決意したわけです。

これまでに1シーズンだいたい4~5か月のプロジェクトで第4シーズンまでやってきましたが、毎回3~4名くらいの23歳以下の方々に参加していただいてました。

最初はアメリカ、インド、欧州、東南アジア、中国という5地域のスタートアップの資金調達動向を探っていましたが、直近の第4シーズンでは井坂さん、井上さん、北森さん、松本さん(50音順)の4名の参加者がこれらに加えて韓国、アフリカ、Crypt、米国IPOとM&A、イスラエルというところまでカバーしてみました。あと井上さんが趣味(?)で米国のVCファンド組成情報なんかも収集してくれました。

やっていることといえばひたすらに世界のテック系メディアなどからスタートアップの資金調達情報を集めてくるというもので、端的にいえばだれにでもできることなのですが、それを一定期間収集を続けることで見えてくるものがあるというのが考え方です。

このあたりは私が学生時代にゼミで読んだ本の著者のが”世の中にあふれている情報を収集・分析・考察することで ぼんやりと未来は見通せる”という感じなことを書かれていて、実際に情報を継続的に集めていくことで点でなく線や面で見れるようになるなという経験があったからです。
(余談ですが、いま調べたらお二人ともお亡くなりになっていることを知りました。R.I.P.)

いまでいえばOSINT的なアプローチであったりするのかもしれません。違うかもだけど

そんなわけで、約半年をかけて動向を見てきたこの2022年後半の世界のスタートアップの状況と今後の展望について私なりの見解について簡単にまとめておきたいなと思います。

1.総論

2022年後半については、たぶんこのブログを読んでいただいている方もご存じのとおりにベンチャー投資についてはだいぶ資金供給が絞られたという印象がありました。

特に米国や東南アジアは顕著で、インドなどにもその影響が波及してきており、Cryptについても1年前の熱狂がどこにいったのかという感じにもなりつつある感じでした。米国の金融引き締めの影響や、株式市場の落ち着きの波及効果を実感したところではあります。

2.各論

個別で各地域をざっと見ると

まず米国は以前のように毎週数社のユニコーンが生まれるようなことはなくなり、どちらかというとシードやシリーズAの件数が増えたような印象があり、こういうところにアメリカの強さを感じています。分野でいうと界隈的にはChatGPTの衝撃がありましたが、その前からAIを活用したサービスを提供する企業が大きく増加し、ソリューションというよりかは具体的にFintechやバイオ、ヘルスケアをはじめ多くの分野にAIを組み込んだサービス(ソフトウェア)提供事業者が増えています。

個人的にはWeb3がやや冷静になったことや、テック巨人を中心としたレイオフなどで、人々が次のフロンティアとしてAIを活用したサービス事業者に流れ込んでいるという部分もあるんじゃないかなという仮説を持っていますが、どうなんでしょうか。このあとも状況を見ていきたいと思います。

IPOについては相変わらずSPACが多くて、それ以外だとバイオ企業のIPOが目立つ感じで、所謂Tech系企業の上場はほぼなかった感じです。

井上さんがまとめてくれていたVCファンドの組成状況からは大手は比較的組成がなされていて、逆に新規で立ち上げるところがやや厳しめという感じではありました。あとはけっこう多岐に渡る分野でテーマ特化型ファンドが立ち上げられてる感じはありました。

個人的には山火事特化や気候変動、生物多様性に特化したシードファンドなどがあるところに面白さを感じました。日本にいると気づかないけど世界的には山火事の大規模化、長期化などもあったりするのでなるほどなと思った次第です

次に東南アジアは、以前は毎週のようにユニコーンが生まれていましたが、総論で述べたようにだいぶそこは減退してきている印象で、その資金もシンガポールのハイテク(先端技術)、インドネシアのマス向け(BもCも)のサービス事業者に集中しているような印象を得ました。

インドネシアは近い将来に人口が3億人にも達するといわれており、島国ではあるものの、その比較的大きな人口(しかも若者が大半)を背景として、多くのサービスが成長するだろうという観点での投資が継続されているという感じがしています。

次に今回はじめてだった韓国ですが、人口でいえば日本の半分よりも少ないくらいですが、今シーズン中に資金調達をしているスタートアップ企業は日本と同じかそれよりも多いのではないかという印象を受けました。以前に聞いた政府によるVCへの助成みたいなものもあってか投資家も多く、政府系基金などもあったりして、資金調達環境がだいぶ整備されている印象を受けました。

そして、韓国スタートアップといえば世界展開を視野にいれてという感じの印象ですが、今シーズンを見ている限りでは、いきなり世界展開というよりかはまずは韓国国内予選を勝ち抜いてから世界展開という感じだなというところと、意外と韓国国内向けのサービスも多い印象でした。AIを活用したサービスも多岐に渡っているほか、先端技術や新しい領域に貪欲に取り組んでいて、Webtoonをはじめとしたエンタメ中心なのかなという先入観は捨て去ったほうがいいなと思いました。

続いて中国。2021年前半などはTech系/デジタル系のスタートアップが数多くあったのですが、相次ぐ規制などによる影響で外資系投資会社の撤退やテック巨人の投資抑制などもあってだいぶ下火になっていて、2021年後半や2022年前半などは半導体、エネルギーや宇宙などのディープテック系の領域に資金は集中していました。

こうしたなかで再びTech系/デジタル系に絞ってみてみようと思った2022年後半ですが、分野特化のコマースやB向けソフトウェアには資金が集まっているという印象で、規制が強いC向け分野はなんとなく下火な印象でした。

次にインド。4thがスタートした9月ごろはまだ資金調達環境はよさそうでしたが、総論で述べたように徐々に資金供給が絞られた(見極めが進んだ)印象でした。こうしたなかでもFintechは多くの企業が資金調達をしていたり、EC関連などのC向けサービスも資金調達が進んでいる印象で、今年たぶん世界最多の人口を擁する国となるインドの成長とともに伸びるサービスへの投資が引き続きという感じはしました。あとは教育関連も徐々に増えているかなと。

それに加えてインドではEV関連スタートアップへの投資がシーズンを重ねるごとに増えている印象で、EVメーカー、充電インフラ関連やEV向けFintechなどなどいろいろなレイヤーのサービス事業者が出現し投資を受けています。

続いてアフリカ。アフリカはなんとなく界隈の印象だとケニアやルワンダあたりが注目なのかなと思ったのですが、それに加えてMENA(Middle East & North Africa)地域の足掛かりであり人口1億人を擁するエジプト、人口が急増し2050年には3.7億人になると推計されているナイジェリア、そして南アフリカの4地域を中心としてスタートアップが投資を受けているいるようです。(参照しているメディアがそれらのエリアに強いっていう話なのかもですが)

全般的にはFintechが多く、ECも多いというのもありますが、南アフリカはヘルスケアとかセキュリティとかもある感じでした。

イスラエルは要素技術が多くアメリカとの結びつきが強いなという印象で、Cryptは調達件数は減っていてDeFiやインフラ関連よりも、NFTの活用したサービスやゲーム、セキュリティなどが増えてきたかなという印象で、市況的にはちょっと冷静になっているものの起業家や投資家は次の一歩を踏み出している印象を受けました。

最後に欧州。貿易や人の動きが多いのでロンドンを中心にFinTechは相変わらず多いのですが、それに加えてB向けソフトウェアやヘルスケアも増えています。それ以外だと以前から欧州で多いFoodTech(代替食品中心)や、排出権に絡めたサービスや気候変動関連、エネルギー関連などのサービスが増えていきているかなという感じはしました。もちろん各種サービスへAIを実装しているところも増えてきています。

3.結論
みんなわかってるよっていう話かもしれませんが、人口が増えていたり経済が大きく成長している国では成長の果実が得られやすいマス向けサービスへの投資は定石であり、先進国では先端のテクノロジーを駆使し、大きな課題を解決しつつフロンティアを生み出していくことに注力するということは変わらないなと。

特にこれまで以上にあらゆる領域でAIを活用したサービスが増え投資を受けていることで、なんとなく世の中が進歩するスピードが速まりそうな気配を感じています。

翻って高齢化が進み、人口が減少をはじめた我が国では、こうした世界の流れに比べてどうなのか、成長戦略そして生存戦略としてどういうところに焦点をあてていくべきなのか。スタートアップが増えれば、ユニコーンが増えればなんとかなるというものではないので、こうした勉強会を通じて投資家としての研鑽と、情報発信を通じた啓蒙をしていけたらいいなと思ってます。

最後に世界スタートアップ展望では5thシーズンに向けて参加者を募集しています。

●対象者:

23歳以下の今後の世界のスタートアップの動向などが気になったりならなかったりする方で毎週データを蓄積していく作業が好きな方(基本的には学生の方がよいかなと)

(性別・国籍は不問で、日本語が使える方。英語や中国語などが使えるとなおいい感じです)

※将来的に起業や投資などを志したい人や世界を股に掛けたい人におすすめです。すべてオンラインで開催しますので所在地は問いません

●応募締切:3/6(月)午後6時

●募集:2~3名程度(※応募多数の場合は審査・抽選を行います。)

興味あるかたはこちらのフォームからぜひご応募ください。お待ちしてます!(応募は締め切りました)

ということで最後は3月になったのでレミオロメン「3月9日」を聞きながら終わりにしたいと思います。

では、また。



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